竜は寡黙だと思う。

けれどあの後、抜け出した小時間、

俺は暇っということはなかった…

竜は気を使っていたのだろうか

カップルじゃあるまいし、そんな気遣いは入らないのだが…

そう考えていると隼人が仕掛けた

山口との勝負の時間が迫ってきた。

竜と俺は土手の上で様子を見ている。

どうやら山口は来ていない。

騒がしい3Dを見ながら溜め息が出た。

どう思う?」

「何がだ」

「サシ勝負」

「あいつらみたいに賭事ではないが、俺は山口が勝つと思う」

「何でだよ」

山口が勝つとは竜は思ってないのだろう

訝し気に俺を見ている。

それに苦笑で返した。

もうそろそろ時間になる。

山口は来ないのだろうか…

「よ!お前ら寒いな!」

バシリと音がして横をみると竜の隣に至極笑顔の山口が居た。

「ってぇな」

「おー悪い悪い」

「先生」

「お前ら寒くないのか」

「あんた来ない方がいいんじゃねぇの」

「何とかなるさ」

山口はにっと笑って土手を降りていった。

盛り上がっている3Dに違和感無く入っていく。

何を話してるかは分からないが、

山口を皆は止めているのかもしれない

「そんな所でくっちゃべってねぇで早くこっち来いよ!」

隼人の声が聞こえて山口は立ち上がった

間合いを取った位置でお互いに上着を脱ぎ睨み有っている。

緊張感が立ち込める




…はずだった。

山口が上着を着るまでは…

小さな笑い声がして横をみると竜が笑っている

確にこれは面白いかもしれない。

ある意味ほっとしたような気もしたが、逃げるという行動では無かったから安心もした

このまま戦意喪失で終りかなっと思ったら前から

自転車に乗った警察官が怒鳴りながら来た

別に悪い事はしていないのだが

山口の「サツだ」っと言う声と共に全員が走り出した。

流れ的に俺も逃げないとまずいのかもしれない。

目の端で山口を追いながら走った。

着いた場所は神社。

息付いている山口に声を掛けようとしたが隼人が来て近くの茂みに隠れた

「っかなんでサツが来たからって逃げるんだよ」

「それはお前、習性って言うか本能っていうかな」

「まぁいいや。手加減すんなよ」

「まだそんな事言ってるのか」

「勝負付いてねぇだろ」

「決着を付ける必要が何処にある」

「俺は先公が嫌いなんだよ!

 先公何て頭ごなしに怒鳴ってるだけじゃん

 自分の都合が悪くなったら逃げるんだろ!あんたもそうなんだろ!

 俺は先公何て信じない!」

「悪いけど私はこれでも教師だ。教え子を相手に本気でタイマンはる事はできねぇ」

「知らねぇかんな痛い目あっても」

背中を大木に付けて腕を組んで二人の話を静かに聞いた。

隼人は山口を試している。

今までどんなに嫌な先生にあたったのだろうか…ある意味人間不信。

山口はこれをどう乗りきるのだろうか…





ジャリ…




顔を上げると竜が息を切らせて走ってきた。

探していたのだろうか…

とりあえず俺は静かに竜を呼んだ

…」

「邪魔…するなよ」

「しねぇよ」

竜は即答で足音を立てずに近くまで来た。

「よさねぇか。こんな馬鹿げたこと」

「うるせぇよ」

話声が消え勝負は始まっていた。

見る必要はない…

そう思って暫く聞耳だけを立てることにした。



「いいか、矢吹。お前は確かに喧嘩は強いかもしれない」



「でもな、喧嘩に強いって事は男として人として強いって事じゃないだろ」



「人の強さなんてものは力で決まるものじゃない」



「まだやりたいのか」

「うるせぇな」

「ここまで言ってわからねぇなら仕方ねぇな」

何度も聞こえた痛々しい音が無くなった

隼人は負けた

「いいか、矢吹。世の中にはなお前より喧嘩に強い奴はいくらでもいるんだよ。

 そんなもんで強さを争ってもなんの意味もねぇんだよ。

 人には自分にとって大切なものを守れる力さえありゃそれでいいんだ
 
 その方法はいくらでもあるはずだ」

「はぁ・・・はぁ」

「それじゃ、また明日学校でな」

山口が帰ったあと、竜は何を考えているのか黙ったまま。

俺は大木から背中を離すと、竜の肩を一回叩き隼人の元まで出ていった

「情けない」

「うるせーよ」

「ほら」

手を差し出すと何も言わずに立ち上がった。

使われずに終った手を戻す。

下を向いて黙り込んでいる隼人

「何なんだよあいつ…」

隼人の呟きは風に乗って消える。

下手に言葉は掛けたくなくて俺は何も言えずにいた…







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----あとがき------
一応ドラマそのままな感じでいきました。
あまり主人公めだって無いけど。
このシーン大切だから!!!(多分)