「隼人…」
登校して来たときには既に事態は起こっていたらしい
中で武田が荒校とのことについて話している
全ての理由を知っているだけに聞いていて居た堪れない気持ちがした
そして教室の中を見ている隼人
その隼人を後ろから俺は見ているしか出来ない
後ろから彼の表情は見えないが、なにか冷ややかな物を見付けた気がした
なにを考えているんだろうか隼人…
それから彼は3Dには入らず、鞄を置いたまま歩き出した。
俺を気付かないかのように素通りして・・
追いかけなければいけない気がした
一人にしたくないと思った
だから同じように鞄を置き急いで彼を追い掛けた
「は、隼人」
「!・・付いて、くるなよ」
背中を向けたまま彼は大声で追い掛ける俺に言い放った。
感情むき出しの声
その彼の声に怯む
だが俺の意思は思っっていたより固かったらしい
止まった足は再び動き出した
「俺は俺の意思で行く」
「駄目だ」
「3Dの仲間として行きたい」
「お前に何ができるんだよ」
「足手まといかもしれないが、お前達3Dの…隼人の力になりたいんだ」
「・・・」
「俺は、参謀なんだろ・・」
「…頑固」
「何とでも言ってくれ」
俺の言葉に隼人は行くのを許してくれたらしい
心に嬉しい気持ちが広がった
「何処にいるか分かるのか?」
「あいつらは大体溜ってる所が一緒だからな」
「流石だな」
俺は隼人一歩後ろを付いていく
徐々に閑静な住宅地を過ぎ郊外に出てくる
見えてきたのは使われていない鉄筋倉庫だった
いざ出陣かっと思い自分自身に気合いを入れる
しかし次の瞬間隼人に肩を捕まれて一歩下がった
「お前は此処で待ってろ」
「は?」
「お前がいたんじゃ戦えねぇだろ」
「それは足手まといだと言いたいのか」
「違うけど」
「女じゃないんだ。俺は守って貰うつもりはないからな」
隼人の言葉なんか今は関係ない
守って貰う必要性など無いしそのつもりも無い
もし、そうであったならばこんな所に付いてくるはずかない
俺は隼人の瞳をしっかりと見つめて意思固く言った
「分かった」
隼人は諦めがついたのだろう・・俺の肩を優しく叩いた
どうやら俺は知らずに緊張していたらしい
彼の緩めた表情と肩の叩きに安心感を得られた
「行くぞ」
「ああ」
隼人は引き扉に手をかけ両手で開けた。
ギギギっと独特の鉄の音が響く。
そこから少し奥に入ると、埃っぽい錆の付いた広い場所に着いた
隼人であまり見えないが、中には大人数の青の学ラン達
入った瞬間、談笑していた生徒達の視線が突き刺さるように感じた
その視線に少しの恐怖と少しの後悔をした
「てめぇ一人かよ」
「一個頼みがあんだけど」
「頼み?」
「これで最後にしねぇ?黒銀と荒高の争い。そろそろケジメつけてぇんだけど」
「あぁ分かった」
「二度とうちの奴らにも手出すな」
「分かったって言ってんだろ。で?仲間は何処だ」
「来てねぇよ」
「ははお前とそいつだけかよ」
「なよっちーな」
「真面目ちゃん此処はお前なんかの来る所じゃねぇよ」
「てめらなんかよ!!!俺一人で十分だ!!」
「なめんじゃねぇよ」
真面目ちゃん…
確実にからかっている
そう見られても仕方ない事は自分でも分かっている
けれど悔しかった
所詮俺は温室育ちだと言われた気がしてしまう
被害妄想のような思考を頭に残したまま、
隼人が早くも隣で殴り合いをしているのを横目で見つつ俺は口を開いた
「お前ら俺の情報力をなめるなよ…お前らの素行。
警察にも学校にも親族にも知らしめる事が出来るんだぞ」
「だから何だって言うんだよ!そんなの恐くねぇよ」
「あぁそうか…お前らにはそれで怒ってくれる奴も
心配してくれる奴も居ないのだな。可愛そうに」
「んだと!」
「頭悪いんだから無駄に体力使うしか出来ないんだな」
「てめぇ」
「弱いと思うなよ…」
俺の言葉に憤慨したらしい荒校生は集団で殴りかかってきた
まさか集団で来るとは・・
そう思いながら、その一人を殴り飛ばす
「肉体労働は俺の管轄ではないんだがな」
それにしても、集団では無理がある
二人対多人数では確実に負け戦だ
隼人なら分からないが俺は殴るなど慣れていないし、ましてした事などないに等しいから
「・・っ」
次第に俺達だけでは無理になってくる
目の端では隼人がやられていた。
助けないとまずいのに後ろから捕まり身動きが取れなくなる
「離せ」
「人の心配よりてめぇの心配した方がいいんじゃないか」
「こいつマジ細せぇ」
名前も知らない奴らに色々と言われる事など先ほどよりも気にならなっかた
それは自分の拳を使ったからか
それとも吹っ切れたからなのか・・・
言いたいなら言わせておけばいい
強く睨み付けると一瞬怯んだ気がした
しかしやはり一瞬は一瞬直ぐに威勢は戻ってしまう
「小田切、てめぇなんでこんなとこいんだよ」
四方塞がりで諦めようかと思ったとき、知っている名前が聞こえ顔を上げた
「隼人!一人で勝手なことすんじゃねぇよ」
まさか来るとは思っていなかった
俺は捕まれた腕を振り払おうと暴れながら叫んだ
「竜!」
「!?お前何でいんだよ」
「隼人を守りたかったからに決まってるだろ」
「俺はお前に守って貰うほど弱くねぇ」
形勢を立ち直した隼人が俺を押さえ込んでいた奴らを殴り飛ばした
「お前その無駄に良い頭使ってどうにかしろよ!」
「無理言うな!!」
本当は無駄口は叩くが余裕は一切ない
痛々しい音が広い倉庫に響く
ただやはり一人増えて三対多勢では無理があった。
特に俺は役立たずにも程がある
「この野郎!」
頬を殴られカシャンっと眼鏡が落ちて踏み潰される。
結構良い眼鏡なのに…また直すか買うか・・・
こういう時に限って全く関係のない悠長な事を考えられる自分に密か苦笑した
「…何こいつ」
俺の前に立っていた男が小さな呟きを漏らす。
何こいつと言われても答えられる訳がない
乱闘が続く中、俺の周りは異様に静かに固まっていた。
意味がさっぱり分からない
でも考えている暇も無い
思考を巡らせ、どうやって逃れようか考えているといきなり視点が反転した
どうやら俺は倒されたらしい
打った背中が痛みを訴えていた
「って…」
「調べるか!」
「いいねぇ!」
痛くて声が出なく睨み付けて暴れると幾人かにおさえつけられる
「何…するんだっ」
「さぁね」
ニヤリと笑った奴に嫌な悪感走る
それと同時に閉めていた学ランが開けられた。
冷や汗と恐怖が押し寄せた
「やめろ!」
大声で叫びはするものの押さえ付けられて逃げることは出来ない
「!てめぇらふざけんな!
から離れろ」
少し遠くでうつ伏せに押さえ付けられて蹴られている隼人が叫んだ
隣には竜の姿
痛々しい傷が目の端に写った
「俺は男だ」
きっと言ったって止めるわけはない。
男っということは見て分かるはずだ。
確実に楽しんでいるだけ…
痛い怖い辛い今までにない体験にもう体が動かなかった
「「隼人」」
声が聞こえた
いまの状態では見ることすらも出来ない
しかし、俺を抑えている奴らの行動はピタリと止まった
「たった二人を相手に随分情けないことするじゃねぇか」
「誰だおめぇは」
この声は山口だと直ぐに分かった
たぶん先ほどの声は武田達
何故ここにいるんだ・・・
「私はそいつらの担任の先生だ」
「先公?」
「返してもらおうか。私の大事な教え子を」
「随分威勢がいい女だな。怪我する前にとっとと帰えんな」
「自分の大事な教え子を見捨てて逃げる奴が何処にいる」
「そんな奴ゴロゴロいんだろ」
「そういう奴らは先公とはいわねぇんだよ!」
「やっぱ、お前面白い女だな・・どうだ?俺とタイマンはってみるか」
「タイマン?なんならお前ら纏めて相手してやろうか?」
振り上げた棒をガチリと掴む山口
開いた口がふさがらなかった
「高校生がこんな危ないもの持ってんじゃねぇよ」
また一人バットを持った奴が山口に降りかかってくる
やばいっと思って声をあげる前に山口は避けていた
「バットは野球で使うものじゃねぇか!」
一人また一人と挑んで負ける
此処まで強いとは思わなかった
「まだ相手してほしいのか!!!どうだって聞いてんだよ!!!」
大声を張り上げた山口に、荒高生は逃げていった
俺は軽くなった身体を痛みに耐えながら動かす
「大丈夫か!?」
荒高生が帰ったあと、武田と土屋と日向が走ってくる
俺は痛む背中をそのままに起き上がる
「!!お前なんで此処にいるんだよ」
「武田・・・」
俺を起こすのを手伝いながら武田は叫ぶ
隣で竜と隼人を起こしている日向と土屋がこっちを見た
それに苦笑するしかない
「お前らが言ったんだろ?仲間だって・・」
その言葉に武田は固まって俯いた
「武田ごめん」
頭を下げて謝ると暖かさを感じた
武田が俺を抱きしめていた
罪悪感と嬉しさで涙が出そうになった
「武田・・・」
「無事でよかった・・・」
「まったくだ。」
「山口先生・・・」
「とりあえずお前ら。此処から出るぞ!!!
日向は小田切で土屋は矢吹、武田は。支えてやれよ」
「悪い武田・・・」
「いいよ。でもさ・・本当無事でよかった」
「ありがとう武田」
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--あとがき--
まだ続きます。
次は夕日シーン。
あれだけなので短いです(たぶん)
身体細くて眼鏡とって美人で襲われるって何となくお決まりパターンだけど
絶対に使いたかったものなので使ってみました
女性向け要素入り込んできましたね。
さぁ、どんどんいきましょう!!!!!!!!!