星の姫様と牛飼いの男が会えるというお伽話が異国の佳人より伝えられたと、
昔、母上から聞かされたことがある。
じゃぁ私も私もっと胸躍らしてずっと慕えるお人が現れるのを他の童と一緒に小さい頃は願いもした。
笹につるした短冊に願い事を書くと叶うって言ってたし。
でも異国の佳人さんが伝えてきたらしい事はやっぱりお伽話はお伽話。
この時代だったら農民は供え物をして、巧みを乞う。そのくらい。
でもさ、どこぞの姫さま?っと牛飼い?っての・・(覚えてないんだもん・・・もう昔の話しだし)
少し似てる、誰とって・・あいつと私みたい・・・
ちっとも帰って気やしないの!
星祭
今日の空は何処までも晴れ渡り、一筋のひこうき雲が綺麗に空を泳いでいた。
朝から動いたせいもあって、その上この季節はじめじめと蒸し暑く、さつきは額に滲み出た汗を拭うと
空を見上げ、曲げていた腰をくっと上げる。
「いたた・・・」
田の中に入って他仕事をしている私。
澄み切った空のを見上げると今日は雨は降らないなっと顔が緩んでしまう。
もう昔みたいな歳ではないから、おおっぴらに星祭の日を喜ぶことなんて出来ない
どちらかというと星祭は村の子供を喜ばせなくてはいけないから
「精が出ますねちゃん」
「あ。奥方様!」
仁王立ちのまま空を見上げる私に声を掛けたのは近くに住む山田伝蔵さんの奥方様だった。
凄く綺麗で田んぼなんかに会わないようなお方なのに凄く優しくて気を使ってくれる。
「良かったらこれ食べて頂戴ね」
片腕に乗せている紅色の風呂敷を私の荷物のところに置くと妖艶に微笑んだ。
いつも思うけど、この方に旦那様はつり合わない気がする・・・・顔としてね
あ!何で私が旦那様と奥方様って呼んでるかっていうと、山田一家にはうちで作ってる作物を買ってもらっているから。
常連様なんだよね。
「す、すみません・・・」
「いいえ。いつもお世話になってるから気にしないで」
「ありがとう御座います!!」
本当に優しい方だと私は思う。それに美しい方だし・・・えーと雲中白鶴って言うのかな・・・・?
あいつは絶対母親似だと思う
「そうだわ、利吉のことだけどね」
「うぇ?」
奇妙な声を出してしまった・・・・なんつー不覚だ・・・
奥方様クスクス笑ってるよ・・・恥ずかしい〜
「うちの息子、夫と一緒に帰宅するって文が届いたのよ。」
「そうなんですか?良かったですね!賑やかになるじゃないですか」
「ええ。だからいつもの分お願いできるかしら?」
「はい!勿論ですよ。後でお届けにあがりますね」
「助かるわ。本当にありがとう。」
にっこりとお礼を述べると去って行く奥方様
あの方は私にとって理想の妻象で理想の女性像
帰ってくるんだ・・・そっかぁ・・・
私は何となしに溜息が出る。
何もかもそれは『あいつ』のせいである
あいつとは山田一家の息子さん山田利吉。顔良し性格は・・・良し。頭も良し。忍者として才能もある
そうあいつのこと。
私と利吉は一応恋仲にはある。けれどあいつはフリーの忍者だからはっきりいって会えない。
だから思う、本当に恋仲にあるのかどうかって。
仕事だから仕方ない・・私も仕事あるし農民は休みなんて無いようなものだし
ようするにどちらも激多忙なわけ。
山田夫妻はどうやって結婚したのかとかどうやって今の状態保ってるのか不思議になる
旦那様だって若い頃は人気でそれなりに活躍した忍者だったろうし・・・
ほら・・不思議。
そういう状況で付き合い始めたなら私たちだって同じでしょう?
でも結婚して愛し合って利吉生んで・・・今でも愛し合ってる。
ここが全然違う所。あいつの気持ちなんかさっぱり分かんないもん
きっと奥方様は辛抱強いお人だったのかもしれないなぁ
「うん!きっとそう!」
元気よく自分に言い聞かせるように声を出してから足を洗い、かけるようにして荷物を持って家の中へと入って行った。
「はぁ・・・」
溜息も付きたくなるでしょう?聞いてないもん今日帰ってくるだなんて・・・
今私の目の前には帰還したらしい山田親子がいる。
野菜とか色々な物を浅い籠に入れて持ってきた。夕涼になったばかりの時刻に
「ありがとうちゃん」
旦那様が優しく微笑んで奥方様が私の持っていた籠を取った。
「えーと・・・この位でいいかしら?」
「え・・・いけません!こんなにはいただけませんよ!」
うちの商売は商品に見合った金額で支払ってもらう。
先程、一応金額は言ったのに奥方様はその倍を私の手に載せてくれた
さすがに此れは商売人としてまずい。っと私は思った。
キチンとそれに見合った額で貰いたいでしょ?
「いいのよ。いつもお世話になってるし貰って」
奥方様はそういって優しく自愛に満ちた微笑を私に向けてきた
正直目がくらみそう
「でも・・・」
「利吉。送ってやりなさい」
「はい」
奥方様が殆ど無理やりで握らせた手のひらの銭をじっと見ていると旦那様が
あいつに余計な一言を言ってしまった
私は慌てる
「え!い、いいですよ!!大丈夫ですから」
「そうもいかん。最近はここらも危ないからな」
笑いながら言ってくる旦那様に少し殺意が芽生えた気がしたのは気のせい。
立ち上がって送る気の利吉と目が合うと私はかなり不自然に目をそらした
「分かりました・・・それでは奥方様。旦那様またご贔屓にしてくださいね」
これはお決まりの言葉二人ともにこやかに笑って頷いている。
でも何となしに嬉しい感じはしなかった。
夜空を見上げれば珍しいぐらいの星空と、空を割る天の川。
今にも零れ落ちてきそうな幾千もの星空。
まだ文月も初めの七日。いつの間にか夜。
私は利吉よりも少し前を歩きながら星を見ていた
「」
「・・・・・・。」
話すことはいっぱいあった。毎日毎日考えて考えてこんな話ししたいとか考えていた
けど、実際合うと言葉が浮かばない。
「」
何度も私の名前を呼ぶ彼にたまらず振り返る私
「何?」
「・・・ごめんな」
「なんで・・・謝るの?」
自分でもひどいこと言ってると思った。何故謝るかなんてわかりきってることだから
「君には寂しい思いを「ええ。したわ」
「・・・・・っ」
確実に抑揚の無い声で言う私。
男女の駆け引きとかそんなことじゃない。私は怒ってるわけでもない
ただ、何処かつらい気持ちになってるから
「・・」
「私たちは・・・本当は何なの?」
「何って・・・・」
「一年に殆ど会えないの?」
「・・・・」
「お伽話じゃないのに・・・」
「え・・・?」
「昔母上に聞いた七夕のお伽話じゃない!これは現実。利吉に会えないことが
どれほど辛いか分かる!?」
こういう風に言うつもりは無かった。最後のほうは殆ど叫び声に近い。
利吉は苦痛の表情。
「分かってる・・・わたしだって同じだ」
「仕事とか・・・やっぱり割り切って付き合うことなんて出来ない!!そんなに強くない!」
「・・・」
「好きて言って毎日抱きしめて欲しいと思うのは我がまま!?」
「・・・・」
「私は奥方様みたいに我慢強くなんか無い!」
「!!!」
止まらなくなった私を利吉はふわりと抱きしめた。
このぬくもりを今まで求めていた私は泣き崩れる
「わたしも・・・同じだよ。会いたかった。会わなくては可笑しくなりそうだったんだ」
「りき・・ち・」
「何度も抱きしめて愛してると囁いていたいのに、出来ない自分が憎いんだ」
「・・・・・・」
「会いたかった・・・」
「うん・・・」
「結婚しよう・・・」
「りき・・・っ」
月夕に唇が触れ合ったままで囁かれた言葉は、極上の愛の言葉
わがままでもいい。会いたいのに会えない天の男女とは違う。
奥方様もこんな感じだったのかもしれないっと私は思った。
----あとがき------
はい!意味不明!!こんなの貰ってくれる人いないと思うけど一応フリー夢でした。
利吉さんですね・・・・あー・・似非もいいところ・・・最近利吉さんを忍たまで拝見しないのでさっぱり忘れてる。
本当にすみません・・・
ここまで読んでいただきありがとうございました。
04’7月7日/姫月。