甘い。心まで甘い
その甘さは時として中毒となる
極恋甘露
今日は久しぶりの遠出の仕事だった
いつもは、どこかの城と城との間者などの仕事依頼がもっぱらなのだが
今回はどこぞの城の、姫の護衛だった
普通の侍として変装しながらの命令を受けていたため、逆らう意味はない。その通りにした
はっきり言うと乗り気ではなかった。
案の定、姫君はわたしの侍姿がいたくお気に召したらしい。
その姫君の我侭さと異常なまでの近寄りに
正直身も心もぐったりな状態だった
お願いだから変に猫なで声をしないで欲しい
一忍者として、それが嘘か本当か位分かっているから…………。
ふと歩いている街中で聞き覚えのある声が聞こえた
その声にだいたいの予想は付く。
しかもそれは確実に正解だともいえる
「いらっしゃーい!!」
近くまで来てみると、やはり正解だったようだ。
一軒の店屋の前で笑顔を振りまきながら一人の少女が物売りをしていた
「きり丸」
「あ!!りっきちさーん!!」
小さな少年は小さな少女になっていて、声を掛けると寄ってきた
そう。きり丸は可愛らしいまでに女装を完璧にしていた
嬉しそうに自分の元に寄ってきて見上げる彼は本当に少女そのものだった
「紅……?」
ふと見上げているきり丸の一点で少し気になることがあった
素のままでも十分大丈夫なのだから、バイトのときまで化粧は必要ないとそう思っていたからだ
確かに前に、忍術学園に遊びに行ったとき
父上の女装のときにする化粧の体験授業で、きり丸は他の忍たまたちよりも綺麗に出来ていた
だから紅の一つでそんなに気にすることでもないと思う
しかし、わたしは思っていたことを口に出してしまった
「あ。この店のおかみさんが塗ってくれたんです」
照れくさそうににこりと笑った。
先程の仕事相手とはえらい違いだと思った
あの姫君は傍にいてその化粧臭さと純粋さに欠ける眼差しがどうも悪寒をさそっていた
今、目の前にいる少年は女装をしているのに全くそれを感じさない
きっと本人に言ったら“当たり前っすよ!こっちの方が売れるから努力してるんです!”
などと確実に言われるであろう
そんなことを思って少し面白くなって笑ってしまった
「なに笑ってるんですか!!利吉さん」
「いや。気にしないでくれ…ところできり丸、何を売ってるんだ?」
「あ!買ってくださいよ利吉さん。これです」
その小さな手から差し出された広くて浅めの木箱には
色とりどり彩色が綺麗な粒が何個もあった
「これは……?」
「飴ですよ」
「あめ?」
「今日はこの細工飴を売ってるんです。菓子屋のバイトです」
「へぇ……。」
本当に綺麗な結晶ばかりだと思った
女人が好きそうな品ばかりで
特にくの一の様に若い娘は好んで買いそうなものばかりだった
「買いませんか〜?」
きり丸のねだる甘い声に嫌とは言えない自分に苦笑した
いつからか自分はこの小さい子が好きになっていた。
土井先生には悪いですけど、きり丸は僕が貰いますから
っと前に宣言した覚えがある。
そう。所詮この子を好きになった自分が拒否をするという選択肢は持ちえていない
さて、何を買おうか……
目の前の少年が、商品が売れたときの喜ぶ顔を想像しながら木箱の端から端まで見た
「これは……?」
一つの飴に目が止まった
それは琥珀色の一番彩色が施されていないものだった。
琥珀色の飴は光に透けて水泡がキラキラと輝く石のようだった
「砂糖を溶かして固めただけど飴なんですけど…………」
「へぇ。これがいい。きり丸これをくれるか?」
「はい。まいどあり〜」
きり丸は和紙の綺麗な包みに何粒かを包んで手渡ししてくれた。
その御代は勿論その場で支払う。
買った飴を一粒口に含む。
物凄く甘い感覚が舌を刺激した。
今いえることは先ほどの任務でこれ以上甘いっということを体験したくなかった
きり丸が自分が食べているのを少しワクワクした目で見ていた。
舌で少し転がして、いい事を思いついた
「きり丸」
「はい?…………………んっ〜……………」
「どうだい?」
「り、りふぃふぃふぁん!!なっ……っで……!!………っだれ……」
きり丸の口の中で先程まで私が食していた飴が踊っているようだ。
その光景に自然と口元が綻ぶ
説明すると、きり丸の口にわたしが口移しで飴を入れた
きり丸は真っ赤になってパクパクとしながら見上げている
そして彼は『利吉さん!!何するんですか!!誰かに見られたら………』
ってなことを言いたいのだろう。
伊達に忍者しているわけではい読唇術ぐらいもっているから、そんなことはわたしにとって朝飯前のこと。
しかし(きり丸的には)幸い周りは誰も見ていなかったようだ。
女装しているから見た目女だから気にすることではないのだが、彼的にはそういう理由よりも私に
口付けをされたことが今一番慌てる理由なのだろう。
そうだな………ごちそうさま、とでも言っておこうか。
暫く甘いものは要らないが、君との口付けの甘さならば
幾らでもわたしは受け止めよう
-------あとがき-------
はぁい………微妙な利きりでした………
石は投げんといてくださーい!!!!
っというか利吉さん自身ありすぎですね!
うちのサイトのリっキーはこんな感じで…………
っというわけでちえ様に捧げます!