とんっ、と廊下で誰かとぶつかる。
自分の後ろの髪の毛がさらりと前に落ちるのが分かる。
誰だ?っと思って探すと、
それは自分よりかなり年下の子供達で、自分を見ると目を輝かしたり青ざめたりと、
コロコロと表情を変えて謝ってくる。きり丸は思わずそれ苦笑をこぼした。
その子達の忍たま服を見て学園の落ち零れ集団と呼ばれていた頃を思い出す。
あれからもう4年もの年が過ぎているのだ。
落ち零れ集団、と呼ばれていたは組は二年生になった頃から急に実力を伸ばし始め、
今では一年は組は誰もが認める逸材になっており、
先輩達教職員は信じられないほど驚き、後輩達には、容姿もさることながら全員が尊敬の目で見られた。
今年できり丸も5年生になる。
学年をおうごとに一人一人バラバラになり、今では殆ど旧友は居ない。
その中で暫く離れたクラスだった親友達が今年度、学園長の思いつきで久しぶりに全員同じクラスになった。
旧友たちと一緒になれたことはきり丸にとっては、精神的にもとてもありがたいことだった。
そして同じ部屋は昔から何故か気の合う団蔵。乱太郎やしんべヱではないことは寂しいことだが、仕方が無い。
きり丸はぶつかってきた一年生に「気にすんな」と言って、軽く後ろ手に降って去っていった。
去って行き際一年生の異様な盛り上がりを聞きながら・・・
月華
ついた場所は新しい5年は組の教室。
カラリと襖を開ければ、昔から変わったようで中身は変わらない大事な親友が一人でいた。
久しぶりに顔を合わした親友とは何故か照れくさく、少しぎこちない笑い方だった。
「久しぶりだね。きりちゃん」
「そうだな。」
「なんか・・恥ずかしいよね」
「確かに・・・」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「「あのさ」」
「「なに?」」
「「・・・・・・・・。」」
「「っぷ・・・」」
久しぶりの会話は、成り立っていなかった。
しかし、そこにお互いの壁は無い。
ひとしきり笑った後、お互い今までの成果に花を咲かせた。
乱太郎は、くせっ毛の髪の毛が伸びて後ろに結び忍び目指しているのに容姿が更に目立つ。
昔よりも可愛らしくなり、常に優しそうな雰囲気は変わらず、やはり不運なのも変わらない。
かたやきり丸は、元々綺麗なストレートの黒い髪をさらに伸ばし、今では腰辺りまできている。猫目がさらにきりっとして、
クールで何処と無く艶のある雰囲気を漂わせている。
きり丸はその持ち前の器用さも手伝ってか、今では学年NO.1で常に優秀。
一言で済ますなら眉目秀麗という感じだろう。
二人とも下級生にとても慕われていて、男女共に恋文の嵐だった。
そんな二人の和やかな雰囲気にもう一人加わることになる
「乱太郎〜きり丸〜!!!」
「「しんべヱ!!」」
もう一人とは一年からの親友福富しんべヱだった。
昔とは少し体系が変わったくらいで、あとは殆ど変わらない。
二人にとって、それは凄くホッと出来る癒し系。
「良かった!!同じ学級だね〜」
しんべヱは昔と変わらない笑顔で言う。
もちろんふたりも変わらない笑顔で言葉を交わす。
「僕ね〜喜三太と同じ部屋なの〜乱太郎は?」
「私は庄左エ門とだよ。きり丸は?」
乱太郎がにこやかに笑いながら教え、きり丸の方を向いて首を傾げる
それに答えようと口を開いた時、思いもしない所から返答が帰ってくる。
「きり丸は俺と一緒だよ」
え!?っと言って三人で目線を上げると、きり丸の後ろにいつの間にか立っている加藤団蔵がいた。
乱太郎しんべヱは驚いて声を出す。きり丸は呆れたように溜息を出す。
「「だ、団蔵!!」」
「久しぶり!」
「びっくりしたよもー・・・」
乱太郎が体制を整えてきり丸の隣に座る団蔵を見る
等の団蔵は嬉しそうに旧友たちを見やる
「気配きづくかなぁ?って思ったけど気付かなかったね。」
「お前なぁ・・・・」
団蔵の言葉に、きり丸は呆れた溜息を再度出す。
なんだかとても仲が良さげに見える。
それに、あぁっと気付いたことを口にする乱太郎
「二人って、3、4と同じ学級だったんだよね」
何か言い合っていたらしい団蔵ときり丸がふっと乱太郎を見る
その目線に少したじろいてしまう。
何せ二人とも凄い美形。先に紹介したきり丸、
そして明らかに体つきが変わり威風堂々的ないでたちの団蔵。
そんな二人に見つめられれば、顔も赤くする。
「乱太郎・・」
何となく今の乱太郎の気持ち分かるよ・・・っとしんべヱにポンっと肩を叩かれてしまう。
しんべヱは周りの分かる人に育ったようだ・・・。
「そうだね。きり丸とは同室でもあったよ」
にっこりと効果音がつきそうな笑顔できり丸の頭に手を置いて団蔵は言う。
引きつりながらそれを見るきり丸。
「本当に・・仲言いね」
乱太郎は苦笑しながら見る。そこに昔の旧友たちがぞろぞろと入ってきて、
微妙な雰囲気は無くなってしまう。
そして、担任の山田・土井が姿を現し、いよいよ旧一年は組が、新六年は組として再活動したのだった。
夜の宵口の刻。湯殿からあがってきたきり丸はペタペタと素足で髪の水分を手ぬぐいで拭きながら歩く。
まだ就寝には少しばかり早いとあって、学園の生徒の笑い声や雑談が
耳をくすぐるように遠くより聞こえてくる。
何刻も前に授業は終わり、きり丸は久しい旧友たちと久しぶりの全員集合で、盛り上がっていた。
しかしそれにきり丸はバイトで途中で抜けてしまう。
少し非難の声があがったが、やはり自分の事情を知ってるだけあって、
無理強いはしない旧友であり、これからのクラスメイト達。
嬉しさと恥ずかしさとで照れながらその場を去った。
きっと卒業後の同窓会もこんな感じだろうと思いながら・・
帰ってきたのは先程、もう風呂に入るラッシュは終わっている。
今では学校公認なため、
身元がはっきりしているバイト先なら夜遅くても大丈夫になった。
その理由として、十分大人になったというのもあるだろう。
そして、ここは5年の長屋だけあって、後輩には合わない。
就寝時間は目前ということもあり、部屋に戻っているか、5年は組の場合、
未だバカ騒ぎをしているか・・そういう理由がある。
まだやっているのならば、自分も混ざりに行こうかときり丸は少し思った。
しかしそれほど自分は情に厚くは無い。
明日から顔はあわせるのだから今日ずっと騒がなくてもいい気がした。
むしろ、その時点できり丸の疲労感のほうが勝ったのだ。だから、行くのはやめにした。
ただそれだけのこと。
冷たい風が気持ちよかった。
風呂場から長屋まで少し遠回りして月を見ながら歩きたくなり、長屋の廊下をゆっくりと歩いていく。
何処かに行きたいような感覚に陥って、頭を振る。
目に映る妖艶な月を眺めるとどうしても、意識的に感覚が鈍ってしまう自分が居るっときり丸は思った。
もう自分の部屋の前辺りまで来ている。先程から過ぎる友人たちの部屋の明かりは無く、
やはりまだ宴は終わってはいないかっときり丸は一人苦笑した。
何を思ったのか、きり丸は廊下に腰を降ろし足を投げ出す。
どのくらい経っただろうか、時間感覚までもが鈍ったかもしれない。
涼やかな夜風が吹く
ふと意識が戻り、目を閉じる。
「少し・・・寒かったかな・・・」
羽織の一枚も着ずに、白の寝巻き一枚
まだ春の先口。
やはり、風呂上りも入ってか、寒さがじんわりときり丸のきめ細かい肌にまとわり付く。
「きり丸」
すっと肩に何かがかけられる。
その感覚と聞き覚えのある声に反応して目を開ける。
「きり丸」
もう一度彼の声。すっと振り向いて相手を見ると想像通りの人物。
「団蔵・・・。」
彼はきり丸に一枚の着物をかけた。淡い群青色の綺麗な着物を。
その着物をきゅっと掴むともう一度前を向きゆっくりと月を見て口を開く
「綺麗だよな・・・」
団蔵はそれには答えず後ろからきり丸を抱きしめる
「だんぞ「消えてしまうかと・・・・思った」
きり丸の呼びかけを遮り力を込める団蔵
きり丸は軽く身じろきをすると着物から手を離して抱きしめる相手の腕をポンポンと叩く
団蔵はきり丸の肩に自分の肩を埋める。
「消えるかよ・・・」
「きり丸・・」
すっと団蔵から離れて素足のまま庭に出る。
暫く歩いて振り返ると団蔵は呆気にとられた顔をしていた
「俺は消えない」
意志の強い目に団蔵は惹かれる。
きり丸の姿に昔聞いた天女の話しを思い出す。
しっとりと白く、手を伸ばして触れたくなるきり丸の肌が月明かりでさらされる。
背が伸び、肉つきが同年代の自分と比べて遙かになく体の線が細い相手。
動きになまめかしさが出て、それが体の線まで柔らかく見せている。
きっとそれは計算でない色気
・・・・つい、押し倒したくなるような、甘さと色気をかもし出す。
いままでに何人の男がその肌に手を伸ばしたのか、何人の男に押し倒されたのか。
俺以外に、どれだけの男に愛されて、その艶が出たのか……。
風呂上り、まだ乾ききっていない頬にかかる艶やかな黒髪、
見ていると動悸が激しくなる。色気があるきり丸はどんな格好をしていても魅せられる
触れたくて、触れられたくなって、触るとどんなに気持ちいいだろうと思い、
その肌に肌を合わせたらどれほどに胸躍るかと思い。
ほかの誰といても感じない胸の高ぶりを感じてしまう。
「・・・・・・っ。」
自分の欲求は押さえられそうに無いっと団蔵は思った。
相手の妖艶な瞳に自分がおぼれる。いけないことだと思いながらも溺れる。
確信犯の如くにっと笑うと、きり丸は足を払いそんな団蔵の隣を横切っていく。
香りが誘う
団蔵は手が伸びてきり丸の腕を掴み引き寄せる
「・・・なに?」
「押さえ・・・・られないから・・・」
腕の中に納まったきり丸の顎を挙げ艶めかしい唇を食らう。
突然のことで驚いたきり丸は掴まれていない手で団蔵の胸板を押す。
器用さは勝てても力では馬術が得意な相手には勝てない。
団蔵は嫌がっているのを分かっていてもその行為はやめない。
徐々に深くなっていく唇の感覚。
ツゥっと口端から銀色の液が流れ出す
「・・・っ・・・ん・・。」
きり丸は自分の感覚神経がやられていくのがわかる。
何度も空気を吸おうと探る。それついでに自分の喉からは普段ならありえない甘い声が出る
角度を変え貪る接吻。きり丸はとうに腰の力を失い団蔵に片手で支えられている
ちゅっちゅっと重なる音が自分たちの耳にやけに響く。
もうどちらが最初に仕掛けたなんて問題じゃない。どちらも互いに唇、そして舌を絡めあう
「・・・はぁっ・・」
つぅっと糸が引きどちらとも無く離れる。
口を開いても、息があがるばかりで言葉にならない。
こくっと溢れた唾液を飲み込んで肩で呼吸する。
何故か体が熱い。
団蔵は愛しそうに見つめ長い髪の毛を梳き、きり丸は視点の定まらない様子で団蔵を見ていた。
視線だけの会話のようにお互いに引かず見つめ
少し肌寒い風と明るい月光が二人を引き立てる。
「俺は・・・消えたりなんかしない・・・この場所が好きだから・・・」
「きり丸・・・」
「団蔵が・・・好きだから・・・」
「俺も・・・好き。愛してる」
お互いの思いを確かめる言葉の囁きあい。
その日、変わらぬ愛を誓い合い御互いの影が重なり合う・・・・・。
-----あとがき-------
・・はい。・・ごめんなさい。(土下座)
団蔵×きり丸でした・・・姫月の中では3つ目に好きなCPです;;
あー・・・・駄目な人は駄目そうですねぇ・・・
きり丸と団蔵はこのお話の中では隠れて愛し合っている仲だと思っております。
姫月は、きり丸贔屓なので、もちろん総受け。攻めも好きだけど基本的には受け。
そしてマイナー好きもあってかこんな感じに・・・・(苦笑)
・・・・団ちゃんって一人称俺なのかな・・・・?あれ???だめだぁ・・似非過ぎる。
勉強し足りない・・・・。
たとえ「僕」でも成長するにつれて変わったって事で・・・・(オイッ!)
此処まで呼んでいただいてありがとう御座いました
ご感想いただけたら嬉しいです。