―=Disguise=―




「きり丸」


そう呼ばれて、振り向くと立花仙蔵が立っていた。

きり丸は、仙蔵の傍に寄った。


「どうしたんすか…?」


ふと、きり丸は何か違うと思った。

しかし、どこが違うのかわからない。


「きり丸?」


仙蔵は、自分の顔をじっと見るきり丸に不思議そうに名前を呼ぶ。


「立花…先輩、ですよね?」

「?そうだが、どうしたんだ?」


きり丸は、首を傾げながら言った。


「なんか、違う」

「なにが?」


仙蔵にそう言われ、きり丸はますますわからなくなる。

いつもと変わらず、さらさらの長い髪。

すらっとした体つき。

綺麗な顔立ち。

いつもと一緒…だけど。


「…ま、いいや!」

「いいのか?」

「はいー!」


よくわからない疑問は、きり丸の中ですっぱり消えていった。



きり丸は、奢ってくれるということで町に仙蔵と一緒にお団子を食べに来ていた。

授業も終わっていて、何も用事がなかったきり丸にとって嬉しいことだった。

しかも、奢り。

きり丸が行かないわけがないのだ。


「立花先輩、ありがとございまーす!」

「いえいえ」


にこっと仙蔵は、笑う。


「乱太郎としんべヱも来れたらよかったのになー」

「委員会だったら、仕方ないからな」


そう、きり丸は乱太郎としんべヱも呼んでみたのだが2人共、委員会だったのだ。

行っておいでよ、という2人にきり丸は残念そうにしていたのだ。


「でも、珍しいっすよね。2人とも委員会だなんて」

「ああ、そういうこともあるだろう」


くすっと、仙蔵が不適に笑ったのにきり丸は気付かなかった。


「そろそろ、帰るか?」

「そうですねー、あんまり遅いと乱太郎たちも心配するだろうから」


2人は、店を出るとゆっくりと学園に向かった。





「おかえり」


仙蔵ときり丸が門を開けて学園内に入ると立花仙蔵が出迎えてくれた。


「…!た、立花先輩!?」


きり丸は、交互に同じ顔をした先輩を見る。

しかし、すぐにきり丸はあることに気付く。


「あ、鉢屋先輩っすか?」


変装が得意な先輩がいるじゃないかと。

出迎えてくれた仙蔵にきり丸は、そう声を掛けた。


「きり丸、私が本物だ。鉢屋、何のつもりだ?」


出迎えてくれた仙蔵は、機嫌が悪かった。

そして、きり丸の隣にいる人物に目を向ける。


「ばれたか。きり丸には、最初ばれるかと思ってひやひやしたけどな」


そう言って、変装を解くと不破雷蔵の姿になった。


「まったく、ばれるに決まってるだろう。私の姿で乱太郎としんべヱの


委員会の仕事を増やしたりしたんだからな」


「えぇー!鉢屋先輩が!?」


きり丸は、驚いて三郎の顔を見る。

顔は、雷蔵なのだが。

三郎は、笑いながら頷くと仙蔵のほうをちらっと見て言った。


「2人で食べた団子はおいしかったなー」


三郎は、ぐりぐりときり丸の頭を笑いながら撫ぜた。

突然、ぱっときり丸は仙蔵に引き寄せられた。

引き寄せられたきり丸は、仙蔵の腕に抱えられて恥ずかしいやらでただ、

2人の先輩のやりとりを聞いているだけである。


「鉢屋、2度とするんじゃないよ」


仙蔵の顔は、笑っているのに目が笑っていなかった。


「たぶんしませんよ」


悪びれもせず、三郎は笑いながら去っていった。

(6年生のしかも立花先輩にそんな態度が出来るなんて、やっぱ鉢屋先輩

ってただ者じゃない。)

と、きり丸はその様子を呆然と見ながら、感心していた。

そんなきり丸の耳に聞こえてきたのは、三郎に対する仙蔵の恐ろしい言葉。

瞬間、背筋がぞっとしたきり丸だった。





仙蔵と2人きりになったきり丸は、何故か仙蔵の正面に正座している。

そして、ここは仙蔵の部屋だ。


「あのー?立花先輩…」

「なんだ」


そっけない。


「なんでここにいるんでしょう?」

「ここは、私の部屋なのだからいて当たり前だろう」

「いや、先輩じゃなくて…むぐっ」


言いかけたとき、仙蔵の手がきり丸の口を塞いだ。

きり丸は、驚いてむぐむぐと何か言っている。

その様子を楽しそうに眺める仙蔵は、おもむろに手を離してきり丸の頬を

そっと撫ぜた。


「鉢屋と私を見破れなかった罰として…」

「罰!?見破れなかったって…はじめは、変だなって思ったんすよ?」


罰と言われて、かなり恐ろしい想像をしてしまったきり丸は青ざめる。


「変だと思ったのなら、もっと疑うべきだったな」


不適な笑みと共に仙蔵の身体がきり丸に近づく。


「た、立花先輩?」


身の危険を感じたきり丸だが、時すでに遅し。


「ちゃんと見破れるように叩き込んでやる」

「え、えぇ!?わー…っ」



きり丸の声なき声は、空気に紛れて誰にも届くことはなかった。





「きり丸に悪いことしたかな?」


くすくすと笑うただ1人を除いては。





               END





相互ありがとうございました!
こんなものですが、どうぞもらってやって下さい(汗)
仙きり+三郎です。
三郎がきり丸のことをどう思ってるかとかは謎…。
つっこみどころ満載なものですが気持ちはもりもりです!
では、これからもよろしくお願いしますね。











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あゆかわ様から頂きました!!!

仙きり小説です・・・ふわぁ・・・凄いです

もろ感激しております(感涙)

鉢屋が出て来ると思わなかったので凄く嬉しいです!!

リンクを貼らして頂いただけなのに、スッテキな小説頂いちゃって・・・一粒で二度美味しいってこの事をいうんだろうなぁ(夢見心地)

本当にステキです!!仙きり萌えです!!愛です!!(落ち着こう・・)

あゆかわ様!本当にありがとう御座いました!

これからも、どうぞliberalismをご贔屓に・・・

                       04’8.18 姫月。