辛くなんかない・・・

これからが自分が決めたことだから

なのに・・・何故こんなにも揺らぐ?

迷いが心疼く







思い出は君と共に








「終わったのか・・・・・」

俺たち岩工3年の夏が終わった

辛くないといえば嘘になる。

桜上水中に負けたことが本当は悔しくて悔しくて仕方がない

なぜ自分はエンジニアの道を選んだのか・・

本当はサッカーをする道を選びたかったんじゃないか・・・

風祭 将のプレーを見てそのことが更に自分の中に増えた

1人で教室の席に座ってボーっと窓の外を見ていた

外ではこの前まで自分が所属していた部活が活発に動いている

「尾形君・・?」

さん・・・」

「どうしたの?」

「いや・・・」

入り口の方から呼ばれて顔を上げる

自分を呼んだのは同じクラスメイトだった

「難しい顔してるね」

「え?」

ガタっと音がして気付いたら目の前にジッと自分を見ている彼女がいた

彼女の瞳が自分を真っ直ぐに見ていた

「あー。サッカー部だぁ!」

一瞬目が合って直ぐ、彼女は先程見ていた窓の外に視線を移す

がんばってるなぁ・・っと呟く彼女が自分には理解しかねた

「サッカー部・・・・好きなのか?」

「え?あ。うん!いつも頑張ってるじゃない」

彼女は振り向いて楽しそうに笑った

その笑顔は迷いのある俺には辛い表情だった

「勿論尾形君も頑張ってたよね」

「え?」

「私ね、吹奏楽部じゃない」

「あ・・ああ」

「ずーっと見てた・・・サッカー部が練習してたのずーっと」

「・・・・」

「だからね・・・・この前の試合も見たんだよ?」

逆光で眩しいが彼女は窓枠に手を置いて話している

彼女の所属する吹奏楽部の楽器音は練習するグラウンドまで

いつも響かせていた。俺もよく聞いていた

「直接的には一緒じゃないけど、いつも一緒な感じしてた

だから試合が終わったときに凄く私たちも悔しかったの

って・・・何言ってんだろうね・・ごめんね変なこと言って」

「いや・・・・・・」

「凄く頑張ってたよね・・・尾形君・・・凄く頑張ってた」

さん・・・」

「もう、見れないんだよなぁ・・・ちょっと寂しいかも」

「え?」

「尾形君のサッカーしてるところ」

「悪い・・・」

「え!何で謝るの?」

「試合・・・負けたからな」

「違うよ!!!負けたの責めてるわけじゃないよ!!ただ私は尾形君が・・・・・・」

彼女は机をバンっと鳴らして違うと言った

下を向いて・・・言葉を連ねながら

俺はただ、ただずーっと彼女を見ていた

夕日の赤が教室に映える

下校の時間が来ていて殆どの部活の時間も終わりを迎えていることだろう

外からランニングをする掛け声が小さく聞こえた

「私・・・わたし・・・尾形君が好き・・・です。だから、ずーっと見てました。宜しかったら付き合ってください」

さん・・」

「へ、返事はいつでもいいの!!!寧ろ断っていいからね!!!!」

彼女は夕日で赤い顔をしているのかそれとも恥ずかしくて顔を赤くしているのか

真っ赤になって早口で捲し立てた

俺は凄く驚いて目を見開いた

目の前の彼女は慌てて鞄を持って走り去ろうとした

俺は無意識のうちに彼女が教室から出ようとしたところを腕を取って引き止めた

彼女は驚いて振り返った

「俺も、 さんの音いつも聞いていた」

「え・・・?」

「グラウンドから・・・君の音聞いていた」

「尾形君」

「俺も・・・君が好きなのかもしれない」

慌てて走ったから教室の机がぐちゃぐちゃになっていた

二人だけの教室

遠くに聞こえる学生の声

お互いの心臓の音が聞こえるのではないかという距離

「ほん・・とに?」

「ああ・・・」

「よ、良かった・・・・」

「あ。おい!」

彼女が安心するとその場に座り込んでしまった

俺はどうすればいいか分からなくて、ただ腕を持って立っていた

暫くすると彼女は満面の笑みで顔を上げた

胸が高鳴った

本当は君の音を好きになったのかもしれない。

けれど、少女から大人に変わる様な君の笑顔が俺に恋っという現実を

与えるには十分で

単純かもしれないけれど君を本当に好きになった

「俺の・・・・何処が?」

自惚れかもしれないけれど聞いておきたかった

彼女が俺に告白してくれたのは何故か

「サッカーしてる尾形君も好き」

・・・さん?」

「だけどね、機械扱ってる尾形君も私は好きなの」

「え?」

「好きなことに熱中している尾形くんを見て自然と目が行くようになったんだ」

彼女の答えは俺には勿体無い言葉に思えた

優柔不断でどちらも好き

終えてしまってからの後悔

君はそんな俺を本当に好きと言ってくれるのだろうか

「俺は・・・自分が本当は何をしたいのかわからないんだ」

「わからない?」

「ああ・・俺の判断で三年は引退を迎えた。それが本当に良かったことなのか

本当は未だに不安がある。彼らの三年間を俺が・・俺の判断で終わらせてしまった。

本当はいつも後悔してる・・・

それにエンジニアの夢だって自分に言い聞かせているだけかもしれない

本当はまだサッカーを続けて生きたいのではないかと・・・

それを人生の糧として生きたいのではないかと・・」

「尾形君・・」

「高校に行っても続けようという気はある。けれどそれはきっと中途半端なんだ

好きの気持ちだけで何かを両立出来るなんて・・・世の中甘くは無い」

「貪欲になろうよ・・・私はそんなこと無いと思うの。

今まで尾形君は好きなこと二つを同時にこなしてきてるじゃない。

振り返ってそれは無駄な事だった?私はそう思わない。

好きな気持ちだけでは何も出来ないなら・・私、今尾形君に告白なんて出来てないよ?

私はずーっとサッカーしてる尾形君も機械を扱ってる尾形君も見ていたい。

好きだからこそ、自分が大好きな人が大好きなことをしているの見てて幸せなの

私も優柔不断なのかもしれないけどね・・・」

サッカーをしている自分

エンジニアとしての自分

俺を見上げて微笑む君は二つを望んだ

何処か肩の力が降りた気がする。

君が俺に望んだこと

俺はただ卑屈になっていただけかもしれない。

サッカーの終わりは彼女との始まりであって

同時に俺は自分の新たな出発が出来た気がした



「ずっと好きだったもん。私は尾形君の役に立ちたいの」

「ありがとう」






------あとがき-------
うほぅ・・・・マイナーですか?そうですか。
でも姫月一押しなきキャラです(笑)

本当にキャプテンって感じがして仕方がありません・・・
(実は彼の口調は難しい・・・渋沢と被るんだよね/オイオイ)
世の中の夢書き様が書くキャプテン夢には尾形キャプは入っていないのです・・
実は悲しい自分ですが此処に・・
尾形君本気で大好きです!!!
同志募集中(笑)
是非お友達になってください!!!!!!!

はい。ごめんなさい・・

大好きなホイッスルはこれからも書いていこうと思います!!

そのためにも日々精進致します!!

拍手本当に有難う御座いましたvv