『思ひつつ寝ればかもとなぬば玉の一夜もおちず夢にし見ゆる』











     理由無きこの想い













人より少しばかり独占欲が強いという自覚のある滝夜叉丸は、

きり丸が皆に可愛がられるのが許せなかった。

誰にでも懐くし、単純な性格をしているので可愛がられやすいということは分かっていても、

自分以外のものに嬉しそうな笑顔を向けるのは我慢できなかった

たとえそれが金稼ぎの作り笑顔だとしてもだ

だからいつも自分に目を向けるように話しかけた。

ただ滝の場合はその向けようとしたときの仕方が下手なだけ。

だから迷惑がられる。

滝夜叉丸自信何故こんなに理不尽にいかないといけないかは分からなかった。

いつもの事。

いつものように自分の話を話せば言い。

何しろきり丸はムキになって怒るところは可愛い。

仔猫が小さく歯向かってくるようで、ついいじめたくなってしまいたくなるほどだ。

だが、最近はそう感じるのは自分だけではないらしい。

他の誰かがきり丸の百面相を楽しむのかと思うとイライラがつのる。

必要以上に実行に移しすぎたのか最近ではきり丸は近寄ってこなくなった。

しかしこれで諦める滝夜叉丸ではない。

今まで学校の陰の権力者の先輩はもう居ない。そう今は滝夜叉丸が最上級生だから。

きり丸も今年で三年になる

見慣れない色の忍び服で今年も腕を伸ばすことだろう

最近では卒業した先輩達もきり丸に会いに来ているという話を聞いたことがある。

後輩にも慕われていて時々自分では無理なのではないかと不安になるときもある

今まで生きてきた中でこんなに悩み自信をなくしているのは滝夜叉丸自身、初めてかもしれない。

毎日、飽きもせずに夢の中にきり丸がでてくる。

しかしいつも手が届かない場所にいて捕まえることが出来ない。

何故だと考えれば考えるほど余計に滝夜叉丸は不安になっていた

「きり丸ー」

「あ。六年生の田村三木ヱ門先輩」

今滝夜叉丸にとって一番やっかいなのは六年ろ組の田村三木ヱ門だ。

長年友として最大で一番の宿敵でライバルとして

いつお前はきり丸と知り合いになったっと滝夜叉丸は思う。

知り合い程度ならまだ普通だがいつの間に仲良くなったのだろうか…

滝夜叉丸にはまったく経緯が分からなかった

ただ、知り合いだという事が問題なのではない。

お互いに強いライバル意識を持っているのだ。

その夢の中にも出て来る相手。

滝夜叉丸が行きたくても行けない夢の中のきり丸の隣で、いつも彼は微笑んでいる

ライバルがいつも微笑んでいる。

これが先輩や後輩ならば全て話は違ってくる。

自分にとって一番のライバルは同学年の奴だ。

だから絶対に負けたくないし好きな相手を横から奪われたくもない。

たとえそれが一方通行な思いだとしてもだ。

滝夜叉丸にとって今は自分のプライドをもかけた一種の賭けなのかもしれない。

きり丸が誰を選ぶかによって自分の運命は大きく方向転換するからだ。








一方きり丸は今まで以上に話してくる滝夜叉丸に少々困り気味だった。

いつも、悪く言えば自信過剰で見えっぱりなところがあってあまり一緒には居たくはないが、

まぁそれなりに、いつも一生懸命で相手の事を考えていて(ただ考えていても、自分解釈で終るのだが)

そんな所はどうしても憎めない先輩だった。

いつもは乱太郎とシンベエと三人で居るときに来ることが多かったのに、

最近異常に一人で居るときに話をかけてくる。

正直きり丸はよく分からなかった。

だから困っている

三人の時とは絶対に雰囲気が違う

もう三年にもなるきり丸だから、それくらいはなんとなく感じた。

どう対処していいか分からない。

いつも自分の自慢話なのに、目が違う

俺は、何か先輩にやらかしたのだろうか・・・

そう考えても全く答えなんか出なかった

「きり丸、ちょっといいだろうか・・」

「滝夜叉丸先輩?」

「おい、滝夜叉丸!今は私と話している最中だ!邪魔をしないでもらえるか!?」

「それなら、後でもよかろう・・・大事な話しなんだ」

「たき・・やしゃ・・まる?」

三木ヱ門は困惑した

いつもの威勢は何処へ行ったのか・・

六年になっても自分と技の競い合いをして騒ぎあっている彼の

いつのも威勢は何処にもなかった

「俺は大丈夫ですけど・・・あ。でも三木ヱ門先輩」

「・・・・私は大丈夫だ・・話は終わったからな・・・じゃぁなきり丸」

何処か張り合いのない彼につまらないという様な目をして三木ヱ門は一つきり丸の頭を撫でて

金髪をなびかせて去っていった。

その背を見送りつつ、改めてきり丸は滝夜叉丸を見た

どこか、彼にしては珍しい目をしていた

切なくて、遠くに行きそうな目

いつもの自信に満ちた瞳は今は面影もなかった

「きり丸・・・」

「先輩?」

そっと彼の手がきり丸の頬を撫ぜた

ピクリと反応してしまいドキリを胸が高鳴った

「私はお前が好きらしい」

「え?」

「私は・・・どうしたら良いのだ?」

「それは・・・」

「それは?」

「俺にもわかりません・・・」

「そうか・・。この天下の滝夜叉丸なんという難問にぶつかったのだろうか」

「は?」

「きっと答えはきり丸を私自身の魅力に気づかせればいいのだろう・・・

そうか!そうだ!!きり丸。そういうことだ!!」

「せ、先輩」

「はっはっは!!考えてみれば簡単なことじゃないか!!もう、きり丸は私の魅力に染まっているんだからな!!」

「この展開は・・・・・」

「良かったな!忍術学園の宝とされている、この私と一緒に居られるんだぞ」

「結構です・・」

「遠慮するな」

「してませんから・・・あ!乱太郎が呼んでる!!・・かも。先輩!!また!!」

「待ちたまえ!私の素晴らしさを君に教えなくてはならないんだ!!」

滝夜叉丸は自問自答から自己解決へ糸口を見つけてしまった

きり丸は先程自分自身の胸の高鳴りを後悔しつつ、その場から逃げるように走った

ただ走りながら思う、滝夜叉丸という人物はああでなくては困ると。

もしかしたらきり丸自信とっくに滝夜叉丸に染まっているのかもしれない。

そう思うと何処か嬉しいような気恥ずかしい気持ちにきり丸はなった









-----あとがき------
うわぁ・・・滝夜叉丸ムツカシイネ!!!
こんなんでごめんなさい・・・
全ての三木と滝ファンの方に土下座します
こんなのお礼にしてすみません;;

えー・・最初の歌は『中臣宅守』の歌ですね

調べればこれの訳もでてくるかと・・・。

本当に此処までお読みいただいて有難う御座います!!

これからも精進致します・・・


拍手ありがとう御座いました!!

これかもliberalismをご贔屓に・・・・